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トップページ > 研究紹介 > ホヤの変態メカニズム2

TRFと名付けられたホヤ

付着突起はホヤの変態開始に欠かせない組織です。これを幼生から除去するとどうなるのか、という実験を行いました。すると、幼生は固着できないので変態を開始できなくなります。ここまでは予想通りだったのですが、尾部を吸収せず変態を開始していないはずの幼生の体幹部(幼生の頭に見える部分。正確には頭部だけでなく消化管なども含んでおり、大人のホヤになる部分)が成長を始め、ある程度成体組織の発達が確認されます。本来変態後でなければ活動を始めない心臓や鰓も活動しています。しかし尾部は残っており、幼生のままです。このことから、付着突起には変態を開始させる能力の他に、変態開始していない時期に成体組織の成長を停止させておく機能があることが分かります。確かに、ホヤの幼生は固着しなければ幼生のままで、成長はいつまでたっても見られません。このことは、時期が来たら大きくなって成体になる両生類や昆虫の変態と大きく異なる点で、ホヤの変態が単に時間経過で制御されていないことを意味しています。

上は正常幼生、下が付着突起を切除された幼生

上記の付着突起除去の実験の途中で、変態に異常を示す突然変異体を得ることに成功しました。このホヤは固着までするのですが、固着後に尾部が吸収されずいつまでも残っています。そのことから、tail regression failed (trf) 突然変異体と名付けました(Nakayama-Ishimura et al., Developmental Biology 326, 357-367, 2009)。

TRF変異体の幼生

trf突然変異体の幼生は、単に変態を開始しないだけではありません。なんと付着突起を除去した幼生と同じように、体幹部が成長してきてしまいます。つまり、trf変異体で異常になっている遺伝子は、付着突起の重要な機能に働いている可能性が極めて高いのです。付着突起の除去という研究を進めているときに、それと同じ異常を示す変異体が得られるという幸運が生じたことに大変驚いています。

trf変異体の原因を突き止めることで、ホヤの変態機構の詳細が分かると考えられます。現在trf変異体の原因遺伝子を探っており、近々正体が判明すると予想しています。

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