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トップページ > 研究紹介 > ホヤの変態メカニズム3

記憶するホヤ幼生

ホヤの変態の研究をしていますが、ホヤの変態は初期発生のイベントと大きく異なり、固着が生じるまで開始されることはありません。また経験的に、シャーレに数多く入れておくと変態する個体が多くなることや尾部吸収開始時間も個体によってまちまちであることなど、様々な要因に影響を受けます。そこで我々は、ホヤがいつ固着し、いつ変態する能力を獲得し、いつ尾部吸収を開始し、尾部吸収にかかる時間は何分かなど、変態のタイムテーブルを作成しました(Matsunobu and Sasakura Developmental Biology 405, 71-81)。生物現象を研究する際に、その現象のタイムテーブルは研究の基礎となる重要な情報で、この論文を基にホヤ変態の研究が推進することを期待しています。

その研究の過程で、ホヤ幼生が記憶することができることが明らかになりました。実験のスキームはこのようになります。我々が研究に使ったカタユウレイボヤは、ふ化後4時間ほどで固着するようになりますが、実際に変態を開始するのはふ化後12時間となります。つまり間の8時間は、固着しているが変態を開始しない状態になります。

固着したが変態を開始していない時期の幼生を剥がしてみるとどうなるか、をこの実験では検証しました。すると、一度固着したホヤは剥がされてそれ以降固着しないようにしていても、ふ化後12時間経過すると変態を開始しました。つまり自分が固着していると誤認しているようなのです。

この固着の記憶には、28分以上の継続した固着が必要なことが分かりました。それより短い時間では、固着の記憶は生じません。また、ふ化後6時間を経過しなければ固着したことを覚えておく能力は無いことも分かりました。ふ化後4〜6時間の間は、例え30分以上固着していても、一旦剥がされてしまうと固着したことを覚えられません。

このホヤ幼生の固着の記憶はどのような仕組みで生じるのか、その詳細は分かっていません。ホヤ幼生はわずか100程度の神経細胞しか持たず、また固着の記憶が神経細胞以外の細胞で生じている可能性もあります。この仕組みについて明らかにすることで、動物の記憶メカニズムや、ホヤの変態メカニズムが明らかになると期待しており、継続して研究することが必要です。

上はコントロール、下が記憶を起こして変態した個体


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