header1
header2

トップページ > 研究紹介 > ゲノム編集

ホヤにおけるゲノム編集技術

ゲノム編集技術が基礎科学のみならず、医学や農学にまで革命を起こしているのは知られてきていることでしょう。基礎研究の方面では、ゲノム編集技術は特に、狙った遺伝子を破壊するノックアウト技術に利用されています。自分が研究する遺伝子の機能をいち早く知るには、その遺伝子の機能がない個体を作り出し、その個体に生じた異常を調べるのが適切です。そのため、研究対象の遺伝子が破壊されたノックアウト個体を自在に作れるようになれば、遺伝子機能解析が効率よく進むことになります。

しかしながらこの技術は、多細胞生物ではかつて極めて難しい技術とされてきました。マウスなどではES細胞を用いることによって効率的なノックアウトが行われていましたが、そのような細胞がない生物では、ノックアウトの効率が大変低いことから至難の業でした。この問題を解決したのがゲノム編集技術で、研究者が狙った遺伝子の塩基配列に突然変異を導入し、遺伝子が機能しないようにする=ノックアウトすることが可能になりました。ゲノム編集ではどのような生物でも基本的に同じシステムで遺伝子を壊すことができます。有名なCrispr/Cas9では、使われるCas9は共通で、どの遺伝子を壊すかを選択するguide RNAの配列のみを変えればよいので、ES細胞のように特別なものを必要とせず、どの生物にも導入することが可能だということが特徴です。

我々はゲノム編集技術にいち早く着目して、遺伝子ノックアウトをカタユウレイボヤで可能にする研究を進めてきました。まずトランスジェニック技術で作製していたGFP系統を利用し、ホヤの中でGFP遺伝子を破壊することをZinc finger nuclease (ZFN)を利用して成功しました(Kawai et al., Developmental Growth and Differentiation 54, 420-437, 2012)。

続いて、第2世代のゲノム編集技術であるTALENによって効率がよい遺伝子ノックアウトに成功しました(Treen et al., Development 141, 481-487, 2014)。この報告では、TALENを発現させる組織や時期を限定することで、遺伝子機能の一部だけを抑えることにも成功しています。条件を絞ることで、より詳細な遺伝子機能を調べることが可能になっています。また、TALENをmRNAの形で導入することで生殖細胞の遺伝子に異常を引き起こし、突然変異体系統を樹立する方法の確立(Yoshida et al., Genesis 52, 431-439, 2014)や、ホヤの持つ高い生殖細胞の再生能力を生かして、突然変異体系統の効率的な樹立法も確立しています(Yoshida et al., Developmental Biology 423, 111-125, 2016)。現在ゲノム編集法で一番有名なCrispr/Cas9についても報告しており、遺伝子のノックアウトに成功しています(Sasaki et al., Developmental Growth and Differentiation 56, 499-510, 2014)。これらの手法を駆使することで数多くの遺伝子の機能を迅速に調べることができるようになっており、贅沢な時代になったと感じています。

参考文献
Kawai et al., Developmental Growth and Differentiation 54, 420-437, 2012
Treen et al., Development 141, 481-487, 2014
Yoshida et al., Genesis 52, 431-439, 2014
Sasaki et al., Developmental Growth and Differentiation 56, 499-510, 2014
Yoshida et al., Developmental Biology 423, 111-125, 2016
Kawai et al., Developmental Biology 403, 43-56, 2015
Sasakura et al., Proc Biol Sci 283, pii20161712.2016
Yoshida et al., Development 144, 1629-1634, 2017



Copyright(c) 2008-2014 Sasakura Lab, All rights reserved.