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Minosトランスポゾンを利用した発生遺伝学的解析

我々の研究グループでは、ホヤの一種 カタユウレイボヤ Ciona intestinalis を主な研究材料としています。カタユウレイボヤは左の写真にありますように成体の時期にはまるで軟体動物を思わせる形態をとっていますが、幼生の時期にはオタマジャクシ型幼生と呼ばれ、両生類のオタマジャクシのような形態をとります。また脊索、背側神経索、鰓裂、内柱(甲状腺と相同器官)に代表されるように、我々脊椎動物と相同の組織・器官を持っており、脊椎動物と同じ脊索動物門に分類される動物です。

カタユウレイボヤ成体 カタユウレイボヤ幼生 カタユウレイボヤの系統的位置

我々はこのカタユウレイボヤの体がどのようなメカニズムにより構築されるかに興味があります。生物の体は親から受け継いだ遺伝子の複雑な働きにより構築されます。つまり、カタユウレイボヤの体作りにおける遺伝子の役割、機能を調べるのが我々の研究テーマです。カタユウレイボヤはゲノムDNAの塩基配列が既に同定されていること( Dehal et al. Science Vol 298, 2157-2167 )、発生学を行う上での基本的技術が既に確立されていることから、この研究テーマに非常に適した動物です。

遺伝子の機能を調べるのにはいろいろな方法があります。その中でも「遺伝学的手法」と呼ばれる技術を用いたものは、キイロショウジョウバエ・線虫・ゼブラフィッシュ・マウス・シロイヌナズナ等のモデル動物で非常によく利用されている、遺伝子機能解析の強力な手法です。特にキイロショウジョウバエ Drosophila melanogaste rのものは有名で、Pエレメントと呼ばれるトランスポゾンを利用した様々なテクニックが開発されています。しかしながらカタユウレイボヤを含めたホヤではそのような技術は長い間利用されてきませんでした。

我々はTc1/ mariner superfamilyトランスポゾン Minos を用いて、カタユウレイボヤのゲノムにに外来DNAを挿入させ、その挿入を次世代に遺伝させる「トランスジェニック・カタユウレイボヤ」の作製に成功しました( Sasakura et al. PNAS Vol 100, 7726-7730 )。この技術により、外来DNAを安定的にゲノムに組み込み、それを半永続的に世代に伝える、いわゆる「遺伝子組換えカタユウレイボヤ」が作製できるようになりました。また、 Minos の塩基配列に工夫をすることにより、エンハンサートラップ・遺伝子トラップといった強力な遺伝子解析の手法をカタユウレイボヤに導入することができるようになりました。トップページの写真は、世界で初めて我々が作製した、カタユウレイボヤ・エンハンサートラップラインにおける光る遺伝子GFPの発現パターンです( Awazu et al. Developmental Biology Vol 275, 459-472 )。さらに Minos を遺伝子中に挿入させることにより遺伝子の機能を破壊した「突然変異体」を作製することにも成功しています。

様々なトランスジェニックラインにおけるGFPの発現

以上紹介してきたように、我々の研究グループはMinosトランスポゾンを利用し、カタユウレイボヤにおいて様々な遺伝学的技術を駆使することにより、このホヤの体がどのような遺伝子の働きにより形成されるのか、そのメカニズムを明らかにすることをテーマとしています。特にMinosの遺伝子への挿入により誘発される「突然変異体」の作製に力を注いでいます。また、多くのモデル生物とは異なり、ホヤにおけるトランスポゾンを用いた一連の技術を開発しているのは私たちの研究グループがほぼ唯一です。ですから、ホヤにおける遺伝学的な解析をより便利に、よりすぐれた方法に持って行くために、私たちはトランスポゾンを用いた技術、例えばエンハンサートラップ、遺伝子トラップ法、変異体作成方法など、一連の技術開発にも力を入れています。このHPをみて我々の研究に興味をもたれた方、一緒に研究をしてみたいと思われた研究者や学生の方は、気軽に笹倉へコンタクトを取ってください。

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